大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和26年(う)4520号 判決

原判決の挙示する証拠は被告人の自白を除いては麻薬統制主事赤石沢勝ほか二名共同作成の昭和二十三年六月三十日附捜索押収調書と前記麻薬没収書謄本だけであるが、そのうち麻薬没収書謄本が原判示事実と無関係のものであることは前記のとおりであるから、結局被告人の自白を補強すべき証拠としては右捜索押収調書しか存在しないことは所論のとおりである。しかし、右書面によれば、昭和二十三年六月三十日に当時の被告人の居室において塩酸モルヒネ液三cc五本入二箱が発見されたというのであるから、これによつて右塩酸モルヒネ液十本が当時実在していたことを認めるに足りる。そして、原判決引用の被告人の供述によると、右の塩酸モルヒネ液は被告人が原判示のごとく同年五月中旬頃原判示今井武雄方において所持しかつ今井武雄に交付した二十五本の一部であることが認められるから、あたかも右麻薬そのものの存在を証拠とした場合と同様に右捜索押収調書は被告人の自白を補強する証拠となりうるものといわなければならない。そして、右の調書によつて実在を確認された塩酸モルヒネ液の数量は十本であつて原判示の二十五本全部ではないけれども、自白を補強する証拠は、いわゆる罪体の全部について存在する必要はなく、自白にかかる犯罪が架空のものでないことを証するものであれば足りると解すべきところ、右十本の塩酸モルヒネ液の実在することによつて被告人が架空の事実を自白したのでないことが認められるから、右捜索押収調書は本件自白の補強証拠たるに足りるものといわなければならない。

論旨は理由がない。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!